イネ もみ枯細菌病 (Bacterial grain rot)

病原:Pseudomonas glumae Kurita and Tabei 1967

病徴:箱育苗でパッチ状に発生する。幼芽はわん曲し,淡褐色ないし褐色になり,腐敗・枯死する。生き残った苗の葉鞘は淡褐変ないし濃褐変し,芯葉はねじれながら抽出する。
苗齢がすすんでから感染した場合には葉鞘は褐変・腐敗し,芯葉は基部が腐敗して抜けやすくなるか,葉の基部が退色して白色になり,ついには枯死する。罹病穂は重傷株を中心に坪状に発生する。もみは全体的に淡紅色を帯びた黄褐色となる。
多くの場合病徴はもみだけに限られる。重症穂では不稔もみが多く傾穂しない。玄米は白色ないし淡褐色に変色し,死米あるいは稔実不良米となり,しばしば健全部と病変部の境界に褐色ないし,淡褐色の条斑が横に帯をまいたように現れる。

伝染:第1次伝染源:種子伝染する。被害わらやもみがらが移植後本田のイネへの伝染源になることもある。第2次伝染:保菌苗が本田に移植されると病原細菌は茎基部および葉鞘基部で生存・増殖している。葉鞘で増殖した病原細菌がもみへの伝染源になる。
開花中の穎内に達した病原細菌はそこで増殖し,もみ枯を生ずる。苗の発病は出芽温度は高いほど(25<30<35度),高播種密度,窒素肥料の多施用で多くなる。
機械移植用の箱育苗では,高温・多湿条件,高播種密度であるため育苗期の苗腐敗,本田でのもみの発病が多くなる。出穂期前後の高気温と降雨は発生を助長する。

防除:苗腐敗症に対しては,健全籾の確保が重要であり,塩水選と種子消毒を行う。種子消毒剤としては,キャッチャー水和剤の浸漬処理,ベンレートT水和剤の種子粉衣処理あるいはスターナ水和剤およびスターナ混合剤の浸漬処理,種子粉衣処理,吹き付け処理が有効である。
育苗期間中は床土のpHを4.5〜5.0とし,過湿をを避け催芽時の温度を高くしない。育苗期の薬剤防除はカスミン粒剤あるいはフタバロン粉剤の床土混和,カスミン液剤の播種面散布の効果がある。
本田期の薬剤はサンケル粉剤,オリゼメート粒剤,カスラブサイド粉剤3DLの施用が効果が高い。

参考: もみ枯細菌病 - 日本植物病名データベース

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