病原:Cochliobolus miyabeanus (Ito et Kuribayashi) Drechsler ex Dastur
病徴:保菌種もみを播種すると,箱育苗では発芽後間もない頃から,しょう葉や葉鞘が褐変し,生育が劣り,ときに葉が出すくんだりねじれたりし,葉には黒褐色短線状の斑点を生じる。
本田期の葉でははじめ,黒色楕円形の小斑点を生じ,黒褐色楕円形斑点となりまわりが黄色のかさで取り囲まれたようになる。秋落ち水田では病斑が拡大し,丸味を帯びた大型病斑で黒褐色から灰褐色となり,やや不鮮明な輪紋ができる。
もみでは暗褐色で周縁がやや不鮮明な紡錘形ないし楕円形斑点を生じ,のちに中央部が灰白色となる。みご,穂軸,枝梗では,黒色の短い条斑が現れ,拡大,融合して幅も広くなり,淡褐色ないしあめ色になって全体が枯死する。
伝染:菌糸あるいは分生子で被害稲わらあるいは罹病もみで越冬する。罹病もみを播くと,高温・多湿の箱育苗で容易に種子伝染して苗の発病を招く。本田における発病は,穂ばらみ期以降,目立つようになる。
葉ではエージが若いほど菌の侵入に対する抵抗力は弱いが,病斑の拡大に対する抵抗力は,エージが若いほど強い。下位葉の大型病斑上に形成された分生子が上位葉や穂への第2次伝染源となる。もみでは,出種直後には,外表皮の細胞縫合部および毛耳から侵入する。
みご,穂軸,枝梗では登熟中後期から発病し始める。本病の本田における発生は,土壌および肥料条件と密接な関係があり,老朽化土壌,泥炭土壌,砂質土壌等のいわゆる秋落ち水田で多発する。
防除:最も基本的な防除対策は土壌改良であり,常発すると老朽化水田では客土や珪カルの施用が効果がある。また,砂質土壌の水田では腐熟堆肥の施用も有効である。
本田期の薬剤防除は,ヒノザン粉剤25DL・微粒剤F・乳剤30,ラブサイドベフラン粉剤,ロブラール水和剤のほかに,これらの薬剤といもち病防除剤との混合剤が有効であり,防除適期はいもち病の防除との同時防除を狙った散布が実用的である。
箱育苗の防除は,ベンレートT水和剤20,ヘルシード水和剤・乳剤,ヘルシードT水和剤・フロアブル,スポルタック乳剤,トリフミン乳剤などの浸漬処理,種子粉衣処理,吹き付け処理のいずれかの種子消毒が効果がある。
また,タチガレン液剤の播種直後のかん注処理も有効である。
参考:
日本植物病名データベース