病原:Thanatephorus cucumeris (Frank) Donk
病徴:葉鞘と葉を侵す。はじめ水面に近い葉鞘に橙色で不鮮明な病斑が現れ,その後,周縁が緑褐色ないし褐色でやや水浸状,中央部は灰緑色ないし灰白色楕円形の病斑となる。葉の病斑はやや大型で不正形となることが多い。
葉鞘でも葉でも下位から発生し始め,しだいに上位へすすむ。病勢が激しいときは,病斑は拡大し,葉鞘も葉も枯れ上がり,打ちわら状になって倒伏しやすくなる。みごや穂軸でもはじめ暗緑色水浸状のちに周縁褐変で中央部が灰緑色の病斑となり,穂は枯死する。
古い病斑には白色の菌糸の塊ができ淡褐色の菌核となる。罹病茎から隣接の茎や葉へ,白い菌糸がクモの巣のように絡む。紋枯病に類似した病斑を生ずる病気としては,褐色紋枯病,赤色菌核病,褐色菌核病がある。
伝染:第1次伝染源は前年度被害株に形成された菌核である。菌核は被害イネのみでなく,畦畔の罹病雑草に由来するものもある。菌核は乾田の土壌中あるいは土壌表面では翌年稲作期まで容易に生存する。
菌核は,22〜23度以上の温度と96%以上の湿度のある条件下で発芽し,侵入を開始する。菌核は発芽して菌糸を伸ばし,葉鞘の合わせ目から裏側へ入る。
古い葉鞘では気孔侵入が多く,若い葉鞘では角皮侵入が多い。紋枯病菌の生育適温は28〜32度,侵入適温は30〜32度で,いもち病等に比べて高い。湿度も高いほど発病が助長される。本病の発生は作期と密接に関係し,早期・早植栽培では発生が多くなる。
防除:耕種的防除法としては,窒素の過用を避け過繁茂にならないようにする。
薬剤防除は,ネオアソジン粉剤,同液剤,バシタック粉剤,同水和剤,バリダシン粉剤,同水和剤,モンカット粉剤,同水和剤,モンセレン粉剤,同水和剤の穂ばらみ期〜穂揃期の散布が有効である。また,モンカット粒剤の出穂30〜20日前の施用も効果がある。
参考:
日本植物病名データベース