病原: Micronectriella nivalis (Schaffnit) Booth
病徴:越冬前の幼苗の葉身および地際部の葉鞘に褐色の斑点〜不正形斑紋を形成することがある。融雪後,被害株の茎葉の一部または全体が鮭肉色になるが,菌核は生じない。激しい場合には枯死する。気温が高くなると下葉に赤褐色の小斑点がみられ,その後病斑の進展は停止する。
他の雪腐菌核病類と同時に発生する場合が多い。病原菌は葉身,葉鞘,穂にも侵害する。茎葉では,淡褐色〜灰褐色で大型の不正形斑紋を生じ,枯死葉鞘の表皮下に黒色の微細な子のう殻を形成する。穂では赤かび病を生じる。
伝染:種子伝染と土壌伝染する。本菌による赤かび病罹病種子を用いると,越冬前に茎葉部に褐色病斑を形成し,融雪後紅色雪腐病がみられる。積雪期間が長く,積雪量が多いと発病,まん延が助長される。
本菌は土壌中の罹病残渣で生存し,これらが連作畑では感染源になる。融雪後,生育が進み過繁茂になると,病斑枯死部に子のう殻が形成される。子のう胞子または分生子が第1次伝染源となり,茎葉部を侵害し,穂に至ると考えられる。
本菌は多犯性で,ムギ類のほかオーチャードグラス,チモシー,ブルーグラス,フェスク類,ブロムグラス類,ライグラス類等多数のイネ科牧草を侵害する。
防除:土壌伝染を防止するため輪作し,刈株を深くすき込む。多雪地帯では,耐病性品種を用いる。健全種子を使用する。ベフラン液剤25の吹付け,塗沫処理により種子消毒する。
根雪直前にベフラン25%液剤,リゾレックッスベフラン水和剤,バシタックベフラン粉剤DL・水和剤,フロンサイド水和剤,ベンレート水和剤,有機銅剤などを散布する。トップジンM粉剤・水和剤は耐性菌が広く分布しているので,その効果は期待できない。
参考:
日本植物病名データベース