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Ⅱ.環境保全型農業技術

3.物質循環

(4)農業施設等からの廃棄物の処理・再利用技術

 施設園芸からは,プラスチックフィルム,ロックウール,砂,礫,あるいは培養廃液等が排出されている(1,2)。また,きのこ栽培に伴って廃培地オガコ(廃オガ)が生ずる(11)。

1)廃プラスチックフィルム

 施設園芸等に用いられているプラスチックフィルムには,ポリ塩化ビニルフィルム(農ビと略称),ポリエチレン(農ポリ),エチレン・酢酸ビニル共重合フィルム(農サクビ)及び多層特殊ポリオレフィンフィルム(PO)等がある(4,7,9,10)。農ビのJISは昭和28年に制定された(JISK6732)。厚さ及び幅により種類が規定され,また,一般農ビ,紫外線カット,トンネル専用,高保温性強化等の多くの銘柄で市販され,一般ハウス・トンネル用,育苗トンネル用,きのこ栽培用,あるいは内張用,遮光栽培用,サイロ用等の目的に応じた用途を持つ。

 農ポリのJISは昭和31年に制定され(JISK6781),一般農ポリ,耐熱マルチ,着色農ポリ等の種類があり,マルチ,トンネルに用いられることが多い。

 農サクビのJISは昭和59年にJISK6738として制定された。葡萄ハウスなどに用いられている。

 施設園芸ハンドブックによると,農ビ及び農ポリの出荷量はそれぞれ,約10万及び7万トン(平成2年)であり(10),農林水産省食品流通局野菜振興課の調査では,平成3年には廃プラスチックの総計は18万トンであった(6)。このうち,再生処理は4.2万トン(23%)で,埋立処理が約23%,焼却処理が約41%であった。農ビ処理量10万トンのうち4万トンが再生処理された。農ポリ約7万トンの処理量のうちの再生処理量は約1500トンとされ,農ビの再生処理比率が高いことを推定させる。それらプラスチックフィルムをとうして,再生処理の主体は公社・経済連と民間である。ちなみに,埋立処理は個人,民間,市町村・農協によると推定され,焼却処理は個人によることが多いとされる。

 農業用廃プラスチックの処理(5,8)の適正化は,農林水産省の指導によるところが大で,昭和51年に次官通達によって,都道府県に“農業用廃プラスチック適正処理対策協議会”を設置して,適正処理を推進せしめること,啓蒙指導,費用負担,収集方法等が指示されている。これらの指導により,現在37県に対策協議会が設置され,廃プラスチックの回収処理が行われている。

 再生処理は(5,8,9,10),①洗浄単純再生(主として農ビ),②非洗浄単純再生(農ビ,農ポリ),③固形燃料化(農ポリ),④エネルギー回収(農ビ,農ポリ)等が行われている。

 洗浄単純再生では,解梱-仕分け,異物除去-粗砕 の後,水洗し,さらに二次粉砕し(フラフ),農ビと農ポリを比重により分け,脱水・乾燥し,フラフ中の金属を分離する。グラッシュミキサーでフラフを造粒(グラッシュ)出荷する。フラフまたはグラッシュはロードマット,ルーフィング材,止水板等に利用される。また,農ポリの半溶融破砕品は,標識杭,U字溝,角材,枕木等に利用される。

 非洗浄単純再生は,仕分け,異物除去-粗砕の後,土砂水分を除くための乾燥を行い,フラフを溶融し,金型に圧入して,製品とする。農ポリからは,標識杭,U字溝,フラワーポット,板等に利用される。

 固形燃料化では,仕分け,異物除去-粗砕の後,乾燥し,これにオガクズ,モミガラを添加して,溶融成形機で豆炭状にする。廃農ビ及び廃農ポリを分離せず押出機でカリント状にする装置が開発されている。この製品は暗渠排水工事の際の疎水材として,モミガラ,砕石等の代替に用いられる。

 エネルギー回収は,廃農フィルムを熱分解し,燃料油を回収する方法であり,農水省の委託を受け,日本施設園芸協会が実験した。油化は,笠岡ら(3)によっても,試みられ,ゼオライト系の鉱物が触媒として優れた能力を持つことが見いだされている。

 そのほかには,気体燃料化,活性炭素化等が試みられている(3)。

2)ロックウール(2)

 毎年または隔年毎に更新される廃ロックウールの処分が問題であるが,破砕後土壌に鋤込む方式で処理されることが多いと推定される。

3)砂・礫(2)

 使用後の砂・礫は,洗浄・消毒・残根処理の後再利用することができるが,作業に伴う環境汚染や過重労働の問題がある。

4)廃液(1)

 培養液は,回収・再利用する場合(循環型)とそのまま廃棄される場合(非循環型)がある。前者は,環境保全の点からは望ましいが,養分組成の変動と病害の伝播が問題となる。後者の場合には,液量をできるだけ減らすこと,液肥として土耕に用いること,あるいは廃液処理をすることなどが勧められている。

5)廃おがくず(廃オガ)(11)

 長野県経済連の試算として,廃オガは平成2年に55万m^3,約26万トンと推定され,このうち,針葉樹(エノキタケ)59%,広葉樹(ホンシメジ)36%が主である。この排出量のうち,腐熟させて土壌に還元されるものは,4割弱(堆肥30%,畜舎敷き料8%)と推定され,その他は,畑に放置するもの47%,焼却8%,燃料利用2%,その他5%とされる。

 長野県農協地域開発機構では,バッグ方式でこれらの廃オガを堆肥化している。

副資材として,豆腐,オカラ,りんごジュース粕,家畜ふん等をもちい,バッグに詰め,すのこ板に置き,シートで覆う。2週間で高温(50度)に達し,6~7週間維持される。製品はバーク堆肥の基準をクリアする。衛生的にも,経費的にも有利であるという。

                    (農業環境技術研究所 新井重光)

参考文献

1)池田英男.培養液の種類と管理.三訂施設園芸ハンドブック.(社)施設園芸協会編.1994.442-447.

2)伊東正.溶液栽培の種類と栽培管理.三訂施設園芸ハンドブック.(社)施設園芸協会編.1994.428-441.

3)笠岡成光.化学機械技術46-産業廃棄物の有効利用とその実用化技術.化学工学会関西支部編.1994.23-31.

4)七社共同執筆.農POフィルムの特徴について.施設と園芸.1993.21-28.

5)(社)日本施設園芸協会.農業用プラスチックの適正処理.1990.

6)農林水産省食品流通局野菜振興課資料.園芸用ガラス室,ハウス等の設置状況.

7)再生資源・有用副産物の産業利用.(株)シーエムシー.1992.

8)瀬戸川喜多夫,有井文雄,勝賀瀬幸男.農業用廃プラスチックの回収システム.施設と園芸.1989.58-67.

9)飛田好雄.廃棄物処理・再資源化技術ハンドブック.廃棄物処理・再資源化技術ハンドブック編集委員会編.建設産業調査会.1993.324-341.

10)飛田好雄.廃プラスチックの処理.三訂施設園芸ハンドブック.(社)日本施設園芸協会編.1994.118-132.

11)塚田章二郎,農産副産物利用の実際と問題点.有機性廃棄物利用研究会「有機性廃棄物の肥料化と環境保全」.1991.1-10.