野菜茶業研究所 研究技術情報官のホームページ(サイト閉鎖) より引用
http://www.vegetea.affrc.go.jp/kicho/johokan/nk/comu/melonkujo.htm

野菜に対する苦情

1.舌先が曲がる苦いメロン(ばら色かび病)

 平成12年初夏に東京の大手百貨店の苦情担当者から「当店で某県産のメロンを購入した消費者からメロンが局所的にとても苦かったとのお叱りを受けたので、その原因を知りたい」と言う問い合わせがありました。

 細部について質問したところ「その消費者はメロンを4つ切りにして3切れを3人で食べたが、いずれも美味しかった。しかし、残りの1切れをその後で食べたらとても苦くてすぐに吐き出した。最初に食べた人は苦味のようなしびれが5時間ほども継続し、夕食は何の味も感じなかった。翌朝にはしびれ?は治まっていた。食べ残しは店に返却され、店でもかなりの苦味を確認した。果皮の中央部のネットがわずかに凹んで茶に変色していた。品種はネット系の露地メロン、収穫日:5月26、27日、販売日:5月29日、返却日:5月30日である。すぐに農水省に電話した」と言う情況でした。

 早速、技術相談の連絡網を通じて専門家にメール配信したところ、千葉大学の篠原教授経由で大学院生の田中さんから貴重な情報が寄せられました。

 要約すると「日本園芸生産研究所の研究によるとメロン果実の局部的苦みの原因はおそらくバラ色カビ病と思われる。Trichothecium Roseum という糸状菌が果肉に侵入して発生し、メロンの他にスイカ・モモ・リンゴ・バナナなど多汁質で糖分の多い果実でも発病する。特に、表皮が薄いアムスやタカミで発病しやすい。菌は果面の細かな亀裂等から侵入して果肉を局部的に腐らせる。外観上はほとんどわからないので、困りものである。園研でも過去に調査研究がなされ、防除に次のような指導をしている。1.未分解有機質が多い圃場で発病が多いので、ばら色かび病が出た圃場では未分解堆肥の投入は避ける。2.収穫2週間前に殺菌を行ってから収穫する。3.植物残さは放置せずに撤去する。」となります。

 要するに、この苦いメロンを見分ける技術は確立されていないので、収穫時に疑わしい果実が出たら産地で食味し、苦かったら出荷しないくらいの規制をしたほうが良いと思われます。これまでに得られた情報によると、初期の段階は果皮の1点が水浸状でやや凹んでいて、発現部を垂直に切断すると内部に向かって果皮がドーム型に水浸状に変色し、病状が進むとバラ色の菌糸が出てくるそうです。

 これまでに同様な症状は10例ほど(産地は九州、関東、東北、東海)寄せられており、当方への連絡を氷山の一角とすると被害は相当数に達するものと推察され、インターネットに公開しました。なお、写真を提供してくださった人は国道沿いの店に抗議しましたが、受け入れてもらえず、やむなく当方にメールされたとのことでした。これまでに、ばら色かび病については以下のWebで公開されています。

1)島根県農業技術センター(旧島根県農業試験場)
メロン果実腐敗症 ばら色かび病

2)北海道病害虫防除所(北海道上川農業試験場)
メロンのばら色かび病(新発生) 昭和60年


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