インターネット対応携帯電話を利用した
圃場情報入力システムの開発○菅原 幸治 農業研究センター研究情報部
E-mail: sugak@narc.affrc.go.jp【はじめに】
近年農業では、より環境負荷の少ない生産体系が求められている。そのような生産を合理的に実践するためには、農家各自が圃場の管理記録や作物の生育状況などのデータを収集・分析して、圃場ごとに適した作付・施肥・病害虫防除等の管理体系を設計する必要がある。 現在、データ分析機能を備えた農作業管理ソフトも市販されているが、ネックとなっているのはデータの記帳やパソコン入力自体が繁雑な作業となることである。特にパソコンは多くの農家にとって未だ扱いやすいものではない上、現場に持ち出して使用することも現実的に難しい。 その一方、インターネットに対応した携帯電話(iモード・JSKY・EZweb等、図1)が急速に普及しつつあり、手軽な情報端末として注目されている。 そこで、データ入力にかかる手間を軽減する手段としてインターネット対応携帯電話を利用することで、現場で作業をしながら簡便な操作で圃場情報の入力や検索ができるアプリケーションシステムの開発に取り組んだ。
なお具体的には、茨城県谷和原村の野菜栽培農家にiモード対応携帯電話を貸与して、当システムによる圃場作付・作業記録データの入力を依頼している。 それとともに、農業研究センタープロ2チームおよび園芸経営研究室と共同で進めている環境保全型の露地野菜生産技術開発において、実地データの蓄積に当システムのデータベースを利用する。【システムの概要】
・携帯電話用Webアプリケーション
インターネット対応携帯電話は、各通信会社を経由してインターネットに接続することでWWWやEメールなどのサービスを実現している(図2)。 特にWWW端末としては、画面の大きさや表示機能に制限はあるものの基本的なHTMLには対応しているため、パソコンのブラウザと同様にWebサーバに接続してWebページを閲覧できるほか、Webアプリケーションを操作してデータを送信することも可能である。
圃場情報入力システムにおけるWebアプリケーションの動作環境は以下のように構成した。
Active Server Pages (ASP) とは、クライアントからの処理要求に対してWebサーバ側でスクリプト(プログラム)を実行し、処理結果をHTMLとしてのみクライアントに送信するWWW情報処理技術である。 そのためASPを利用すれば、WWW端末の表示環境に依存しないWebアプリケーションを構築できる。加えてODBCドライバおよびADOコンポーネントを介することで、Webサーバ上のデータベースを操作することが可能になる。
オペレーティングシステム MS Windows NT Server 4.0 Webサーバ Internet Information Server 4.0 サーバサイドスクリプト Active Server Pages 2.0 データベースソフト MS Access 97 ・圃場情報データベース
データベースのテーブル構造を図3に示した。当システムでは、端末に表示されるWebページからユーザの認証ならびにデータの入力・更新・検索といったデータベース操作がすべてできるようにした。 また、各農家の入力したデータが特定のWebサーバ上のデータベースに蓄積されることで、データを利用する研究者側にとってもデータ収集にかかる労力を削減できる。【Webアプリケーションの構成】
圃場情報入力システムWebアプリケーションは、下記のURLから利用できる。
インターネット対応携帯電話専用 http://riss.narc.affrc.go.jp/i.htm パソコンのWebブラウザ専用 http://riss.narc.affrc.go.jp/kssys/i-mode/ ・ユーザ認証
利用登録しているユーザ(農家および研究者)は、自分のIDをログインページで入力するとシステムにログインできる。ただし、一度ログインした後はどのページから操作を始めてもよいように、データ入力可能なページすべてにバックグラウンドでのユーザ認証機能を持たせている。 ID登録されていないとデータを入力できず、また特定の権限を持つユーザ以外は他ユーザのデータを表示・変更できない。なお当面は、システム管理者がユーザと利用端末の登録を行う。・入力項目のカスタマイズ
ユーザ情報変更ページでは、ユーザが各自に合わせ、栽培作物・圃場筆数・作業者・作業内容についてデータを入力する際に提示される選択項目を設定することができる。そのほか、ユーザ自身の登録情報およびユーザIDを変更できる。・圃場作業記録ページ
このページでは、現在作付されている圃場・作物を選択して作業の開始あるいは終了の入力を行う(図3A-C)。現場で作業を行う前後にすぐに入力できるよう主な入力項目は選択形式にしており、特にその時点での時刻が自動的に提示されるようにした。また、入力項目が少ない簡易作業日誌ページも試験的に作成した。・作物生育状況記録ページ
圃場作業記録と同様、現在の作付を選択して作物の生育状況(生育評価とメモ書き)を記録する(図3E)。現段階で研究データとしては直接利用しないが、ある程度蓄積すれば利用価値の高い事例データとなり得るため、試験的に作成した。・データ検索ページ
ユーザ自身が入力した作業記録や生育状況記録のデータを日付で検索できる(図3F)。検索結果ページはデータ修正ページにリンクしており、そこで個々のデータの修正・追加・削除を行う。今後、データの蓄積に応じて検索機能を高めていく予定である。図1, 2, 3, 4 (PDF形式) 一般向け展示パネル (JPEG形式)
【今後の計画】
圃場情報入力システムを試用してもらう農家、および入力データを利用する研究者から意見を採り入れながら、システムのデータベース構成やユーザインターフェースの改良を進める。 現段階での課題として、データ入力の手間をより低減するために、作付する作物や時期に応じて入力可能な作業項目が自動的に提示されるようにする必要がある。 また、圃場管理記録データがある程度蓄積された後は、圃場管理や作付体系の設計を支援するためのデータ分析アルゴリズムを順次追加する予定であり、データ入力や検索の際に必要に応じて分析結果を提示できるようにしていく。
農業環境工学関連4学会2001年度合同大会 講演要旨 (PDF形式)
地域総合研究(谷和原) 平成12年度現地検討会 資料 (PDF形式)
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