最近の野菜栽培における主な生理障害

引用文献: 野菜の生育障害の現況と問題点 −栄養生理障害を中心に−
大野芳和 農業技術 43(4):169-172 (1988)

ハクサイ キャベツ ホウレンソウ レタス シュンギク タカナ
ミツバ ネギ ダイコン カブ ニンジン サトイモ
ナス キュウリ メロン スイカ イチゴ

各生理障害の詳細については、ページ下に記載した参考文献を参照してください。

症状名 主な症状 発生しやすい条件 原因など 文献
ハクサイ
心腐れ症 主な症状:結球期以降に現れ,中心部腐敗,葉縁油浸状 N多肥,低Ca,連作,浅耕土乾燥 部分的Ca欠乏 2), 8)
心なし症 生長点異状,無結球 低pH,低Mo,低塩基 不明 2)
中肋さめ肌症 外見正常にみえるが,結球葉の殆どの中肋がさめ肌 高pH,乾燥,低B B欠乏症 2)
ごま症 結球期に中肋にゴマ状の斑点が多数発生 N多肥,日照不足 NO3の過剰害 2)
キャベツ
葉褐変症 結球部の葉周縁が褐変 N多肥,黒ポク下層土の客土 Ca欠乏とみられる 2)
ホウレンソウ
カッピング症 葉の先端が内側に巻く 生牛ふん,生鶏ふん多量施用 不明 2)
葉褐変症 本葉展開初期に濃緑褐変し,生育抑制 P多用 P過剰とみられる 2)
立枯れ症 3葉以後,生育不良となり枯死 高EC,高NO3 病害との関係あり 3)
黄化葉症 6葉期以降,集中降雨後,葉のふ入り黄化がはじまり,葉脈に緑色を残して葉身が黄化 作土易還元性Mnが30ppm以下で発生,支笏火山噴出物を母材とする土壌 Mn欠乏症 4)
レタス
黄白化葉症 生育後半から収穫期に外業が黄白化 気温上昇期では高温ほど発生,下降期でも初期高温で発生 不明,マルチによって軽減 2), 5)
異常球 気温上昇期の高温によって中肋突出や球葉のよじれが発生 土壌乾燥,高Nレベル,日照不足など 不明 2), 5)
シュンギク
心枯れ症 心葉の先端部が褐変し,心止り症状を呈する。収穫適期ごろ増加し,抽だい期には激甚化 高温期の栽培(露地雨よけ,ハウス)に発生しやすい Ca欠乏とみられるがP過剰で症状が促進 9)
タカナ
縁腐れ症 生育旺盛期に葉縁が水浸状に萎凋し,額縁状に白変枯死 N多肥で発生 N過剰によるCa欠乏とみられる 3)
ミツバ
根株腐敗症 根株を掘取後腐敗 後期N多肥 不明 2)
ネギ
葉先黄化症 発芽直後から本葉2〜3葉期に細根の褐変と葉先が黄化し枯死 透化性の悪い土壌で高EC,高NO3,高P 不明 3)

症状名 主な症状 発生しやすい条件 原因など 文献
ダイコン
赤心症 葉根など外形には異常はないが,肥大根中心部全体が淡い黄褐色または赤褐色に変色 播種後30日以降,マルチなど含め根肥大期高地温及び低B土壌で発生 高温期B吸収低下はB代謝の変化とみられる 2)
褐色心腐れ症 根中心部が暗褐色から淡黄色に変色。粗皮状,さめ肌,赤心症状もある 有効B0.3ppm以下で発生,0.5ppmでも条件によって発生 B欠乏症 2)
葉枯れ症 6葉期の中位葉・ノ葉縁が黒紫色,その後葉脈間が灰褐色に変色,さらに葉が枯死する場合もある 砂土において高P,N,K少のとき高温時に発生,有効P100ppm以上で多発 P過剰害と養分のアンバランスとみられる 2)
茎葉異常症 播種2〜3週間後,葉が奇形となる。軽症では回復,激しいものは芯どまり。側芽多発 早期播種で多発 不明 3)
カブ
さめ肌症 根部のさめ肌,淡褐色または心ぐされ 雨よけ栽培で高pH,乾燥など B欠乏症 2)
ニンジン
しみ症 根部表面に水浸状のしみ発生 排水不良土 不明 2)
サトイモ
芽つぶれ症 子,孫イモ頂芽が陥没し,芽が欠損 盛夏の乾燥,低Caレベル,K過多 Ca欠乏症 2)
裂開症 子,孫イモに縦状の裂目が発生 盛夏の乾燥,低Bレベル 乾燥によるB吸収低下によるB欠乏とみられる 2)
黄化葉症 葉脈間が黄化 ハウス促成栽培で低温ほど発生しやすい,温度上昇によって回復 Mg欠乏とみられる 2)

症状名 主な症状 発生しやすい条件 原因など 文献
ナス
褐色斑点症 冬期葉脈間にクロロシスを生じ褐色斑点を発生。樹勢低下,果実肥大低下 着果が多く,樹勢低下株に発生 不明。養分のアンバランスとみられる 3)
キュウリ
葉枯症 ハウスキュウリ摘心後,葉が葉脈にそって褐変する。下位葉から中位葉へ進み,側枝に及ぶ 発生は品種間差あり。ひじり(白イボ)多発,まじみどり(黒イボ)少,排水不良土,蓄積P過多 葉にP,Caの吸収大,Kが少ない。短日期早期におけるP多量吸収によっておこる 3)
メロン
プリンスメロン
発酵果症
1〜2番果の果肉が水浸状に変色して発酵。黄色から緑色に変色 高肥沃土,排水不良土,N多肥,未熟家畜ふん多肥,ばれいしょ跡地等で多発。果実肥大期の日照不足,高夜温,カボチャ台木など N過剰吸収,日照不足,高夜温などによるC代謝の異常に伴うエタノール発酵 3)
メロン及びスイカ
黄化葉症
葉脈間にMg欠様症状,次第に葉が硬化,クロロシスは葉脈間から全葉身へ。また下位葉から上位葉へ広がる ハウス栽培で発生 不明 3)
緑条果症 成熟期果面の一部に縦に濃緑り条斑あり N過多,水分過多,草勢の強い時に発生 窒素過剰吸収とみられる 6)
果面汚点症 収穫期近い白変期に果面に濃緑色の小斑点を生ずる 多肥,日照不足,夜間低温,高湿度,不完全整枝,白変期の水分過多で発生 NO3の過剰吸収とみられる 6)
スイカ
葉枯れ症 収穫前10〜15日頃より着果過多や草勢が低下した株の着果節位葉を中心に黒褐色の小斑点が発生 Ca/Mg比7以上で発生 Mg欠乏症とみられる。カボチャ台木で軽減 6)
葉脈間褐変症 下葉の毛茸基部が褐変し,次第に葉脈間に褐変が広がり枯死 新開畑初年目,pH4.2以下で発生,Mn++1,000ppmに達する Mn過剰症 6)
葉縁黒枯れ症 葉先端部の葉縁に褐色斑点を生じ,中央に広がる着果節葉に激しく発生 水田転換畑や基盤整備後の排水不良畑に発生 根の機能低下による養水分吸収低下。水分不足とK欠乏の複合症とみられる 6)
急性萎凋症 収穫10〜15日前,急激に萎凋し枯死 強整枝,多着果,曇雨天後の晴天に発生 不明,根の活性低下か
イチゴ
葉枯れ症 新葉の葉縁が褐変〜黒変,葉の伸長によりしわ,ひきつれが生じカップ状になる 古い産地の促成,半促成栽培,多肥高温,乾燥,低Ca,低Bで発生 Ca,Bの複合欠乏症とみられる 7)
根褐変症 開花期以降根が褐変化する 低温,日照不足,過湿過乾,塩類集積などで発生 果実と根の同化産物競合による根の活性低下とみられる 7)

参考文献

1) 野菜試験場:
最近における野菜・花きの連作障害の実態 研究資料第18号 1-195 (1984)
2) 野菜試験場:課題別検討会議資料「葉根菜類における生理障害の現状と対策」 1-42 (1986)
3) 九州農業試験場:作物の生育障害と土壌条件に関する研究会並びに昭60年度九州農業試験推進会議土壌肥料分科会資料 6-(1)-15-(6) (1986)
5) 野菜試験場:課題別検討会議資料「レタスの生産拡大に伴う諸問題(品種と作型を中心として)」 23-25 (1983)
6) 野菜試験場:課題別検討会議資料「メロン,スイカの品種と生産安定上の諸問題」 42-49 (1985)
7) 野菜試験場:課題別検討会議資料「イチゴの品種と栽培上の諸問題」 78-85 (1985)
8) 野菜試験場:課題別検討会議資料「高冷地における夏秋野菜の生産技術上の問題点」 26-33 (1985)

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